結婚式のありようも変わったが、人生の門出でどちらが相応しいか、歩き始めからあらぬ事が気に掛かる。


我孫子宿では手賀沼に寄り道する。
この湖畔では大正年間に白樺派の志賀直哉、武者小路実篤、民芸の柳宗悦、陶芸のバーナード・リーチなどが集まって様々な活動が行われ、暗夜行路もこの地で執筆された。
志賀直哉旧宅の茶室なども残っており、また白樺文学館という小ぶりだが、白樺派のエッセンスの詰まった文学館もある。
文人達の一時代を想像する為に、脚を運ぶ価値が十分だ。



大利根橋で、風に吹かれながら坂東太郎を渡ると取手宿。

高台には平将門が創建したといわれる長禅寺。
ここには日本一古いと言われるさざえ堂の三世堂があるが、残念ながら、内部を見る事は出来ない。

長禅寺のすぐ傍に本陣の染野家が修復され、公開されている。
茅葺のどっしりとした建物は、屋根が美しい曲線を描き、内部の土間の荒々しい小屋組みが対照的に剛毅な空間を作り出している。
単に格式を越えた佇まいがあり、何時までも後世に伝えて貰いたい建物だ。


街道には、江戸時代からの造り酒屋や、今は殆ど入手不可能な大判のレトロガラスを使った出桁造りの町屋が彩りを添える。


町を離れると、藤代宿まで5kmほど全くの一直線の街道となる。
稲の緑が眼に優しいが、遮るものの無い、何処までも見通せる道は炎天下にはかなり辛い歩き旅。

藤代宿では鎮守の相馬神社の祭礼だったが、祭りの賑わいは見られず、人の姿の殆ど見られない寂れ行く商店街が、陽炎の中ひときわ侘しさを感じさせる。
恒例の打上ビールも少しほろ苦い。

